2008 文五郎倉庫 photos text ( JP|EN )

陶芸産地・信楽の窯元にある築50年の倉庫を改装した「文五郎倉庫」。
当時としては珍しかったであろうRC造で、多少の劣化はあるものの杉板型枠によるコンクリートの豊かな表情を持っていた。また、外壁には、過去四代の先人の手仕事の遺産とも言える泥の手形が象徴的に残る。
これらの表情は最大限残し、必要箇所にパッチワークを施す「補修」を改装の基本方針とした。この改装計画では倉庫の機能は維持しつつ、収納品の鑑賞が可能なギャラリー機能、産地とのコラボレーション可能なレクチャールーム機能が空間に求められた。内装については、ジャンカやコールドジョイント等の不良箇所に元の杉板型枠に合わせた矩形状の左官を施しパッチワーク状の補修を行った。
矩形の配置はデザインされたものでなく補修必要箇所の分布となっている。
既存壁面とそのパッチワークにより主となる展示空間は構成され、同時にこの空間に展示者へ能動的展示を求めるきっかけを備えた。また、遮光上必要な建具を同素材とすることで、機能をパッチワークの延長とし扱っている。これら「補修」により、先代から続く時間の連続性を寸断することなく、既存空間にパッチワークを施すことでその表情の変容を試みている。

 
 

文五郎倉庫 HP
 
共同設計 :上田篤(un voice一級建築士事務所)
総合ディレクション :松井利夫、上田篤
グラフィックデザイン :八木良太
家具制作、展示企画・構成 :小山真有
施工・協力:株式会社 朝日ホーム